豆いち 

珈琲豆とうつわと絵葉書の店

米沢懐かしの味 松竹軒の特製中華そば

子供の頃は今ほど外食などはしなかったと思うが、たまに外で食べた時の思い出は強烈に心に残ることがある。残念ながら今ではなくなってしまった味の思い出を綴ってみよう。

昔の三友堂病院は今よりももう少し奥まったところに玄関があったのではないだろうか。その門前左側に松竹軒という中華料理屋があった。店に入ると何個かテーブルがあり、南側にカウンターその奥が厨房だったように思う。

家から遠いその店には何回も足を運んだわけではない。只そこには今でも忘れられない思い出がある。

ある日母と私が三友堂に行こうとした時のことだ。病院に行く前にその店で中華そばを食べて、子供の私だけが店に残ったことがあった。多分店主と母は知り合いで、すぐ戻ると言って私を預けて見舞いに行ったのだろう。

そして私がやっと食べ終わったころ、大きな風呂敷を背負った老婆が店に入ってきた。

「あのぉ、中華そば一杯くっちぐやんねべが」

見た感じから、在郷のほうから出てきた方のようだった。店主がわかったというと、その人は言葉を続けた。

 「おら肉食わんにがら、肉入んにでけろ。んで油濃いのもきしゃいだがら油も入んにでけろ」

それを聞いた店主は困り果ててしまった。

「ばばちゃ、油全然入んにど、中華そば作らんにがら、すこしだげ入れさせでけんにべが」

その次に老婆は再度条件をつけた。

 「わがったげんど、あんまりしょっぱいなも食わんにがら、醤油も入んにでけろ」

またもや店主は困り果たが、その条件で何とか中華そばを作り上げた。 

松竹軒のスープは元々非常に透明感のあるものだが、その人に出した中華のスープはほぼお湯?のようなものだった。そして叉焼も、もしかしたら支那竹も入らなかったような気がする。ネギとナルトが載った超シンプルな中華。そのお客は透明且つシンプルな中華そばを、ゆっくりと美味しそうに平らげた。そして頬を紅くして

 「ああ、んまがった。ここの中華美味いって聞いでだんだげんども、やっぱりんまがった。おしょうしなしっ」と言って代金を払い満足げに店を出て行った。

 「いやぁ、あがな中華作ったな長いごどやってっけんど初めでだ」

店主は自分に言い聞かせたのか、私に言ったのか分からなかったが、不思議な経験をしたといった面持ちで、このセリフを語った。

 その後母が戻って来て、私は車の中でこの様子を語ったに違いないが、小学3年ぐらいの表現力でどこまで伝わったのかは甚だ疑問だ。

2015/12/05 12:36 (C) 珈琲豆屋です!

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